前回、西尾維新作品にからめてオタク産業の将来を考察してみました
今回はその続き。そもそもメディアで言われる「ライトなオタク層」という認識は正しいのか?というあたりを考えてみましょう ➘ 

乱暴な分け方で、オタクというおおきな集団を「エヴァまでの世代」と「初音ミク・ボカロ世代」にぶった切って考えてみましょう。
ターニングポイントは2008年あたりの「ニコ動」と「涼宮ハルヒの憂鬱」。
年齢層は~20代まで/30代以降
近年では上の世代は「○○おじさん」、下の世代は「ライトおたく」といった感じに呼ばれています。

では、この「ライトおたく」をオタクの入り口、入門者と捉えるのが正しいのか。ぼく個人としては、この認識は間違っているのではないかと最近思うようになりました。メディアがとらえる典型的なオタクは「情報を収集・分析」するタイプ。「ライトおたく」は「情報を発信」するタイプで、この2者は「スタイルの違い」でしかないのではないか。「ライトオタク」も、そこですでにオタクとしての完成形なのではないか。

現代のオタク文化の二極化は、ネットやスマホなどのデバイスの登場と、社会不安・所得の低下といった社会情勢の2面からとらえる事ができます。
Google先生の台頭により、それまで個人で行われてきた情報の集積と分析の結果を共有できるようになりました。いわゆる「ggrks(ググれカス)」現象です。
すると、情報の価値が「集積」から「発信」へのシフトが起こり、作品や個々人のオリジナリティが重視されるようになります。

これによりオタクを取り巻く市場の様相も変化します。「ヤマト」「ガンダム」「エヴァ」といったビッグ作品によるトップダウン型ではなくて、「絵師」「配信」「同人誌」「コスプレ」「Twitter」といった横のつながり、コミニュケーションが価値を持つようになりました。

また、社会情勢の不安により、「消費型」から「創作型」に変化。もちろん市場には「おじさん」と「若い世代」が混在していますので、たとえば200万円の等身大 加藤恵フィギュアが売り切れるなどの羽振りの良い話がある一方で、円盤を買わない、むしろあまり多作品を観ないというオタク層も多く存在する状況となっています。


それにもうひとつ加えるなら、「パロディの呪い」というものを挙げてみます。今おもいつきました。
冒頭で「ハルヒ」がターニングポイントと述べました。この作品の名セリフ
「宇宙人、未来人、異世界人、超能力者、いたらあたしのところに来なさい!」
からも分かるように、「ハルヒ」はSF・ジュブナイル系作品の集大成でありパロディとなっています。パロディにも様々な形がありますが、ハルヒだったりスパロボだったりアベンジャーズだったりと、あるジャンルを総括するタイプのパロディは非常に危険。そのジャンルの衰退の引き金となる危険をはらんでいます。これが「パロディの呪い」

ミニマムな例でいうと、相原コージ、竹熊健太郎による漫画「サルでも描けるまんが教室」(通称サルまん)。少年マンガをひっくるめてギャグ化した作品で、こういったスタイルはかなり作家生命を削る結果となることが多いように感じます。


話を戻して、オタクが「集積」から「発信」へと変化する要因のひとつに「次世代への文化・技術の継承の失敗」も挙げられるとおもいます。そもそもコミニュケーション能力の低い我々オタクですから、若い世代との交流を持って情報や技術を次につなげていくことが苦手。むしろ、前述のようにそれまでの財産を「パロディ」という形で消費してしまっているので、下の世代が次に繋げてゆくことが困難なんですよね。スパロボでロボット作品は情報として知っていても、ではそれと同等の熱量を持った作品を発信する技術や環境を継承されていない。良質で余力のあるアニメスタジオであれば新人の育成にも注力できるのですが、例えばジブリの崩壊だったり、アジアへの外注ばかりになったりして、その糸が切れる。現在では財力のある富裕オタクが買い支えていますが、近いうちに作品を発信する側も消費する側も苦しい状況に陥ると予想されます。というか既にアニメ・ゲーム業界全体が万策尽きつつあります


古いオタクとしては寂しい限りですが、今後はビッグヒットアニメ→祭りのような盛り上がりは少なくなってゆくと思います。海外への情報発信も減少傾向。ただ、現在の若い世代の横のつながりによる創作活動はわりと明確には金額化されていないので、スタイルの変化はあるもの総エネルギー量はまだ維持できているのかもしれません。いわゆる「沼」に引っ張り込むのではなくて、作品を消化し、また創作してゆく次の世代のオタクが今後日本を代表してゆくでしょう


で、そんな混沌とした中で生き抜くために老婆心ながらアドバイス。学校の勉強はしっかりしておいたほうが良いかなと。いわゆる教科書の内容だけでなく、学生という立場でできる経験(貧乏旅行や部活、遊びなどの余暇も含めて)はできるだけ動けるうちに養分として取り込んでおいたほうが良いと思います。一見無駄な事も含めて。神絵師もボカロPも、一見素人みたいな顔して水面下では死に物狂いで吸収しているとおもいます。

 「勉強はいいぞ」

長文失礼いたしました